病識について。
みかちゃんが退院して数ヶ月が経過した頃、僕には気になることがあった。
その頃の生活はというと、ほぼ何も変わらずにみかちゃんはよく寝る。
22時くらいには寝て翌朝昼前後に起きるといった生活を送っている。
僕は家事と育児と空いた時間に仕事をしていた、といっても仕事はほぼ出来ていない。
そんな中気になることといえば、みかちゃんは陽性反応が出た時の事を記憶しているのだろうか、あの時言ったことややった事を覚えているのかというものだった。
僕は晩御飯を終えた後おもしろ可笑しく、笑っちゃうようなテンションでみかちゃんあの時こんな事言ってたけど覚えとん?と聞いてみた。
するとみかちゃんは全て覚えている。一言一句覚えていると言った。
かなり意外だった。通常では考えられないような摩訶不思議な事をたくさん言っていたのでもうすでに記憶がないものと僕は考えていたからだ。
そこで、僕はみかちゃんにドクターから病名って聞いた?と聞くと聞いていないとの事。
それも意外だった。
みかちゃんが入院して以来、統合失調症の事を少しずつ勉強していた僕はこれも日本らしい選択なんだろうなと安易に考えていた。
精神疾患の治療において日本は欧米諸国からするとかなり遅れているらしい。
日本においては入院して社会から一時切り離して投薬により症状を抑えるといった感じだ。世間において統合失調症という症状があまり認知されていないのも表に出さないからだろうと思う。
欧米諸国では入院はもちろんするみたいだが、どちらかというと社会に出てコミュニケーションによって治療していくものらしい。
僕の知識もまだまだなのでこれからもっと勉強したいと思う。
そこで僕はその時言おうか言わまいか迷ったが、みかちゃんに病名を伝えた。
そして統合失調症の症状についても話した。
するとみかちゃんは素直に、そう言われてみればあの時のあれは幻覚や幻聴だったのかもしれない。
この瞬間、みかちゃんにやっと病識が芽生えた気がした。
それ以来、薬に関しても自分からちゃんと飲んでくれるようになった。
今までは毎日のようにこれ飲まないかんのかな?いつまで薬飲むんやろとか割とネガティブな事を言いながら飲んでいた。
それ以降、ネットで自分で統合失調症の事を調べだしてより病識がしっかりと出来てきたような気がする。
みかちゃんはその時の事をどう記憶しているか分からないが、僕の中ではあの時みかちゃんに当時の様子を聞いて、思い切ってそのまま病名と症状を伝えることが出来て本当に良かったと思う。
あの時初めて夫婦で統合失調症という病気について一緒に向き合うスタートラインに立つ事が出来たと思う。