先輩が教えてくれたこと
先輩の所へ行く時には事前にLINEして、今から行きます!なんかいるもんありますか?
と聞いて行っていた。
土日は奥さんやお子さんと一緒だと聞いていたので土日は行かないようにしていた。
僕が心がけていたのは毎日デイリースポーツとスポニチと僕の最高の笑顔を届ける事。
これだけ、笑顔でおはようございます!と挨拶して少し話ができそうな時は話をして体調があまり良くなさそうな時は新聞を置いて、机の上を綺麗に整理整頓して帰っていた。
そんな日が少しの間続いて、これからずっと続いて少しずつ回復していけばいいなと思っていた。
僕はまだまだ教えてもらわな行かん事あるでしょ!
ちゃんと色々教えてくださいよ!
と声をかけていた。
先輩はそうすると一生懸命に僕に伝えたい事を考えてくれたりしていた。
僕の同級生の仲良しは、先輩の体調もしんどそうやしお見舞いは控えとくとの事だった。
僕はそうか、そんな考え方もあるよねと思った。
先輩の病状を知っている仲間は僕を入れてほんの数人しかいなかった。
絶対に誰にもいうなというのが先輩の強い希望だった。
お見舞い1つにしても、行く側と来られる側に色々な考え方があってどれが正しくてどれが間違えているといったものはないと思う。
僕は毎日新聞と笑顔を届けたいと思ったし、それは先輩の体調が悪くても良くてもだ。
きっと先輩は喜んでくれていると思ったし、僕はそれくらいしか出来ないと思ったからだ。
いつものようにお見舞いに行って帰る時、先輩からLINEが入ってきた。
いつもありがとう、感謝してるよ!
と。
僕は何言ってるんですか?当たり前でしょ!
と返事をした。
そして、ある日いつものように今から行きます、何かいりますか?
と聞いた時に、今から処置が始まるから会えないかも知れないし忙しかったら来なくてもいいよ、ただ新聞あったら嬉しいな!と返事があった。
もちろん行きます。会えなくても僕は全然問題ありません、机の上に置いときますね!
と返事をしていつものように会いに行った。
病室へ向かう時に大人数の看護師に囲まれて、何やら作業をしている患者さんがいた。
その部屋を横目に病室へ向かうと病室はベッドごと無かった。
なんじゃこりゃ?
と思っていると、慌てて看護師さんが来て、今処置をしているので待ちますか?
時間は少しかかると思います。と言ったのでほな新聞置いておいきます。
阪神勝ったで、新聞読んで下さいねとお伝えくださいと看護師さんへお願いした。
そう、先ほど病室へ向かう際に大人数の人に囲まれていたのが先輩だった。
僕は帰りしな、目をつむって何やら処置をされている先輩の姿を見た。
眠ってるのかな?って感じだった。
それが最後だった。
その2日後亡くなった。
もしかしたらと考えていたのか自分でも分からなかったがその話を聞いた時に涙は全く出なかった。
お通夜も泣かなかった。
昨年、みかちゃんが統合失調症になった時に人生で1番泣いた。毎日どれだけ涙が出るのか分からないと思うくらい泣いた。
もう涙出んくなったんかな?と自分でも思うくらい先輩の死で泣くことはないような気がしていた。
翌日の告別式、大勢の人が来ていた。
ほとんどの人が先輩の近況を知らず、いきなりの報告で驚いた様子だった。
僕は事前に知らせてもらって、毎日お見舞いに行かせてもらってたので他の人たちとは違う状況だった。
もし教えてもらっていなければ僕はおかしくなってたと思う。
取り乱し暴れていたかも知れない。
想像するだけで震えるくらい怖かった。
告別式では後半あっさりと涙が出た。
不思議と寂しくは無かった。
なんだかずっと心の中に先輩がいる気がして、優しく厳しくいつも応援してくれる先輩がずっとそばにいる気がする。
だから、最後も笑顔で見送ることができた。
先輩は僕に色々な事を教えてくれた。
最後にはとっても大切な事を教えてくれた。
生きること。
生きていることの素晴らしさ。
そして、死ぬこと。
ありがとうございます。
僕もいつか必ずそっちに行きます。
だから、行った時はまた色々遊んで下さい。
そして、これからも僕をずっと応援して下さいね、頼みますよ!!
そう最後に僕は先輩に伝えた。